ギター信号入力部の検討
ギターの出力信号は非常に出力インピーダンスが高いので、信号を受ける側の回路のインピーダンスも高い回路で受けて、後段の回路に低インピーダンスで接続する必要があります。
そうしないと、後段回路で信号を加工するにしても、信号レベルが小さくなってしまうなど、扱いずらい為、普通はバッファーと呼ばれるインピーダンス変換回路をエフェクターの入力段に入れます。
エフェクターに限らず、ギターアンプのプリアンプ回路なども同様です。
下図を使って簡単に説明します。(厳密にはギター信号は交流信号なので、出力インピーダンスも単純な抵抗だけでは表現できません)
ギターの出力信号 Vsは、ピックアップで発電される非常に微弱な信号(数10~数100mV)です。
出力インピーダンス Zoutに相当するのは、ピックアップコイルの抵抗(数kΩ)やボリュームポットの抵抗(数100kΩ)などから算出される値となり、ざっくり数kΩぐらいだと考えましょう。
エフェクターの入力インピーダンスをZinとすると、エフェクター後段の回路へ伝わる電圧レベルは、オームの法則からもZoutとZinで分圧された値になります。
Vin = Vs × Zin / (Zout + Zin )
ここで、限りなく、Vin ≒ Vs とするには、Zin >> Zout とすれば良いですね。
したがって、例えば Zinを 数100kΩ~1MΩとかにしておけば、十分だと思います。
高い入力インピーダンスで受けて、低インピーダンスで出力する代表的な素子としては、トランジスタやFET、オペアンプなどがあります。
理想的なバッファー回路の条件は、入力インピーダンスが無限大で、出力インピーダンスがゼロです。
そういう意味では、オペアンプが一番簡単に理想的な変換ができる素子になります。
中には、トランジスタやFETにこだわったバッファー回路もありますが、今回はディジタルエフェクター製作なので、アナログ回路のこだわりはそこそこに、シンプルにオペアンプを使うことにします。
回路設計
まずは、オペアンプを選定します。
基本的には、オーディオ用のオペアンプなら何でも良い気がしますので、たまたま部品ストックの中にあった、TIのTL072を使うことにします。いろいろなエフェクターに使われている定番オペアンプです。
あえて選定の注意点を挙げるとすれば、オペアンプのスルーレート(S/R)ですね。
スルーレートとは簡単に言うと、速い入力信号に、出力信号がどのぐらい追従できるか、みたいな特性です。単位はV/μs なので、1μ秒あたりに何V出力電圧が変化(上昇、下降)できるかを表します。
たとえば、20kHzで振幅が±1Vの信号をオペアンプに入力し、出力側できれいに入力信号を再現するのに必要なスルーレートは、超概算で求めると、
20kHz の周期Tは、
T = 1 / 20kHz = 50μs
正弦波の角度0度から90度(周期の1/4 = 12.5μs)で、電圧は0Vから、振幅ピークである1Vまで上昇するのだから、必要なスルーレートは、
S/R > 1V / 12.5μs = 0.08V/μs
となります。
これに対して、今回選定した、TL072のスルーレートは13V/μsなので、ギター信号を可聴域でバッファする分には十分ですね。
で、作った回路は以下です。
まず、入力されたギター信号を1MΩの抵抗で分圧して受けます。
そのあと、コンデンサを通して、交流成分だけを通します。ハイパスフィルタ回路ですね。
ハイパスフィルタの下の回路は、オペアンプを単電源で使用しているので、電源電圧Vccの1/2の電位を交流信号の中心に下駄上げする回路です。
両電源のオペアンプを使用すれば、この回路はいらないですし、ハイパスフィルタなしで、直接ギター信号を入れても大丈夫だと思います。
バッファー回路部は、オペアンプを使ったいわゆるボルテージフォロア回路です。入力信号を増幅率1倍で出力するだけの回路。なんの意味もないように見えますが、しっかりインピーダンスを変換しています。
今回はここまで。続く。
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